真菰(まこも)とは

真菰(まこも)は稲科の植物。東南アジアを中心に広く分布しています。
古くは万葉集に詠まれ、紀貫之、西行、藤原定家、など各時代の文化人も歌や句に詠むほど身近な植物でした。
大型の多年草で本来は沼や川の岸辺に群生していましたが、近代は護岸工事などでその様子も少なくなってきました。
原種は穂をつけるが、ほとんどが黒穂菌がつくことで、根本が肥大化してマコモダケが出来ます。このマコモダケは、食材として食べてもおいしい。
また、古くから真菰は薬草としても利用されており、本草綱目という漢方の古典にも取り上げられています。
日本には古代種と言われる原種と東アジア全体に分布している栽培種があり、出雲大社の涼殿祭りや古くより神社仏閣の神事等で使われる原種の真菰は近年河川の護岸工事などで生息が少なくなり、全国各地に生息しているこの日本古来の原種の真菰を甦らせる試みも始まっています。
私たちの活動で使用している広島の田んぼでも栽培種と古代種を分けてご神域を作り、祈りを捧げて作業をしています。

日本神話の中の真菰

真菰は天地開闢(かいびゃく)の神々の一神。『古事記』では、八百万神に先駆け、天之御中主神(アメノミナカヌシノカミ)、高御産巣日神(タカムスヒノカミ)、神産巣日神(カミムスヒノカミ)の 造化三神がまず現れます。その次に生まれた神が宇摩志阿斯訶備比古遅神(ウマシアシカビヒコジノカミ)と天之常立神(アメノトコタチノカミ)で、この宇摩志阿斯訶備比古遅神こそが真菰であると言われています。神名の「ウマシ」は「うまし国」などというのと同じで良いものを意味する美称、「アシ」は葦、「カビ」は醗酵するもの、芽吹くものを意味するのだそうです。つまり「アシカビ」とは「葦の芽」の事で、活力を司る神とされています。「ヒコヂ」は男性を表す語句なのですが、別天津神はみな性別のない独神です。葦が芽吹く力強さから、「陽の神」とみなされ、「ヒコ」という男性を表す言葉が神名に入ったものではないかと思います。

真菰のしめ縄・ご神体

真菰は歴史のある神社・格の高い神社では、少なくても御本堂には、しめ縄として使われていまし、真菰で編んだ草枕が、宇佐八幡宮・神田明神、その他の神社のご神体とされています。
日本で最も古く大きな神社の一つである出雲大社で、毎年6月1日に「涼殿祭」という行事も行われています。日本酒の樽を飾る菰被りは、真菰で編んだもの、こも(菰)が語源ですし、仏事でお盆の時にお供えを飾る盆ゴザも、真菰で編んだものが使われています。
このように、真菰は日本人の暮らしと切っても切り離せない存在が長く続いていましたが、現代社会ではまじない的な捉えかたで、なぜ?真菰だったのか?を問うこともなく見過ごしてきたようです。日本の国土が荒れてきたのは、古来より受け継がれてきたモノには必ず私達が生きていく上に大切な鍵が密かに隠されていると思うのです。『聖なる草・癒しの草、霊草』その真実はこれからの私達が怒涛の荒波の世の中を乗り切る智慧を持っているような気がいたします。
昭和天皇が崩御され、そのご遺体を納めた棺の下に真菰がびっしりと敷き詰められ、運ばれたのも、いかに真菰が重要な存在であるかの証拠に他なりません。